宇治茶の名産地・宇治田原町にある正寿院(しょうじゅいん)。駅からのアクセスがさほどよくないにもかかわらず、たくさんの人がこぞって参拝しています。
SNSでも人気の猪目窓(ハート型の窓)や160枚もの日本画が敷き詰められた天井画が人気。そして別名「風鈴寺」と呼ばれる所以である風鈴まつりが、夏に開催されます。
その魅力に惹かれて多くの人が参拝する正寿院。是非、ご覧ください。
2023年8月時点での情報で執筆しています。訪問の際には、最新の情報をご確認ください。
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正寿院とは*塔頭寺院として建立されたお寺
正寿院は、正治2年(1200年)に飯尾山医王教寺(現在は廃寺)の塔頭(たっちゅう)寺院として建立されたお寺とされています。
塔頭(たっちゅう)とは
塔頭とは、本来、禅宗の寺院に設けられた高僧のお墓。それを守るように周りに建つ弟子たちの庵(住居)が増えていき、それぞれが独立した寺院となったため、転じて、大寺に所属する小寺を指します。
御本尊は十一面観世音で、50年に1度だけご開扉される秘仏。また、不動明王坐像(重要文化財)は日本を代表する仏師の一人・快慶の作であります。
正寿院境内MAP・参拝時間
訪問した日は「風鈴まつり」開催期間中。その時の参拝の様子をお伝えします。
参拝日は2023年8月12日(土)。車で向かい、到着したのは8:40頃。第1駐車場にはすでに10台くらいの車が停まっていました。拝観は9時からということで、車の中で待機している人が多かったです。
「早いけど行ってみよう」と思って本堂に向かったところ、手間にある客殿の入口に風鈴が飾ってあるのを発見!
パチパチと写真を少し撮ってから、本堂へと向かいました。
客殿に入るには、本堂の方で拝観受付を済ませる必要があります。
客殿前の道を奥へ行くと、左手に本堂・拝観受付があります。
8:50頃に拝観受付に着くと、準備が整っていたのか、受付をして頂けました。拝観料などを納めると、パンフレットとお菓子をもらえました。
参拝した日は「風鈴まつり」開催期間中だったので、受付を済ませてそのまま進むとすぐに「花風鈴小径」がありました。その小道を抜けると奥に本堂があります。
また、受付でもらったパンフレットを客殿の受付で提示する(スタンプを押してもらう)と、「則天の間」に入ることが出来ます。「則天の間」では、天井画と猪目窓を楽しむことが出来ます。
それでは、正寿院境内をご紹介していきます
【2023風鈴まつり】「風鈴寺」の夏の風物詩、花風鈴小径も
拝観受付のすぐ右手から始まる「花風鈴小径」。2000以上もの風鈴が出迎えてくれます。最初にくぐったのは、ひまわりの花風鈴でした。
上段と下段の2段に風鈴が吊るされているので、撮った写真がとても華やかになりますね。ちなみにこの小径の花風鈴は、期間中に花が変わるようです。お好きな花の時期に参拝してみてはいかがでしょうか。
公式Instagramには素敵な写真がいっぱい!参拝・イベント情報も発信されているので、是非チェックしてみてください
他にもいろいろな種類の風鈴が、風に吹かれて音色を奏でていました。少し強い風が吹くとすべての風鈴の音が力強く鳴り響き、しっとりとした音色とは違い圧巻でした。
私はあまり写真をうまく撮れないのですが、一眼レフカメラを持った人も多く来られていました。どんどん人が増えてきたので、午前中に訪問するなら参拝開始時間がおすすめです。
【地蔵堂】「叶紐」に願いを込めて結ぶと願いが叶う「叶堂」
花風鈴小径を進むと右手に見えるのが「地蔵堂」。大地を表す「地」と胎内を意味する「蔵」。大地のように広くて大きな慈悲の心であらゆる苦しみから救ってくださる仏様です。
この地蔵堂にたくさん結ばれているカラフルな紐は「叶紐(かのうひも)」。結び目が表裏で「口」と「十」になっており、「口」+「十」=「叶」ということから、縁起の良い結びなのだそうです。この叶紐に願いを込めて地蔵堂に結ぶと願いが叶ったことから、地蔵堂は「叶堂(かないどう)」とも呼ばれるようになりました。叶紐は結ばず、お守り代わりに持ち帰ってもいいそうです。
私は帰宅してから地蔵堂のことを調べたので、叶紐のことを後で知りました。「叶紐は拝観受付時にもらえる」とのことなのに私はもらわなかった為いろいろ調べてみたら、「8のつく日にもらえる」という情報が。私は12日に行ったのでもらえなかったのかなと思います。ただ、8のつく日の授与がまだ存続しているか確証は得られませんでした。
【私の花手水】思いのままに花を飾る
地蔵堂の左手に手水鉢「私の花手水」がありました。こちらは造花が飾られており、横の看板には「ご自身で飾ってみよう」と書かれていました。ここにある花(造花)を、自分が思うように飾りなおして思い出にしてくださいということなのでしょうか。その場ではよくわからず、帰宅してからそういうことだったのかなと思いました。
これ以外の花手水はすべて生花なので、触らないようにしましょう
【本堂】「結いの紐」でつながり、ご縁を結ぶ
御本尊・十一面観世音は50年に1度だけ開扉される秘仏
上の写真が本堂。靴を脱いで上がります。右側に縁側のようなものが見えますが、ぐるっと回った最後にここから出てくることになります。その隣がこちら。
そしてそのまた隣がこちら。
御本尊は十一面観世音。扉の奥にいらっしゃいます。その扉は50年に1度しか開かないため、普段は姿の見えない秘仏です。そのかわり目の前に垂れている五色の「結いの紐」が十一面観世音の指とつながっているので、紐を挟んで手を合わせることによって直接ご縁を結ぶことができます。
この本堂内陣には、江戸時代に描かれた天井画があります。1枚1枚に梵字(古代インド語を表す文字)と蓮が描かれ、仏様の世界や悟りの境地を表しています。これを「曼荼羅(まんだら)」といいます。ひとりひとりは異なる存在であっても、お互いを尊重して支えあうことによって、いのちを生かし合うという教えだそうです。
本堂の釘隠しに注目!「猪目(いのめ)」とは?
この六角形の装飾は釘の頭を隠すために用いる「釘隠し」。よく見てみるとハート型のような穴がありますよね。これを猪目(いのめ)といいます。猪目は古来から使われているもので、社寺建築の装飾模様としてよく見られます。
「猪目」はイノシシの目、つまり厄除け・魔除けの力がある獣の目が由来という説がある一方、お釈迦さまに縁のある菩提樹の葉の形だとも言われており、災いを除いて福を招くという意味が込められています。
猪目はハートを逆さまにした形だそうです。
<余談>
「イノシシの目」と聞いて「イノシシの目はハート型なの?」と不思議に思い調べてみました。写真を見ても「うーん・・・」という感じ。一番しっくりきた説は「懸魚をイノシシの顔に見立てた時に、目の位置にあったから」という説でした。
「懸魚(げぎょ)」とは神社仏閣の屋根に取り付けられた妻飾りのこと。木造の建物を火災から守るために、火除けのまじないとして水に関係の深い魚を吊るしたような形にしていたため、「魚を懸ける」で「懸魚」と言う名前になったと考えられているそうです。
赤で丸をつけたところが懸魚。その下半分が魔除けのためにイノシシの顔に見立てて作られているとしたら、耳があって目があって、そして目の箇所に施された装飾ということで「猪目」・・・なら、なんとなくわかるような気がします。まあ、勝手な私の想像なのですが。
全国47都道府県ご当地風鈴大集合
同じ部屋の左側の壁には、全国47都道府県ご当地風鈴が飾られていました。やさしく鳴らしてもいいらしいです。
個人的には石川県と京都府が好みでした。
本堂のその他の場所を巡る
隣の部屋がこちら。右に松藤鳥図(画:諌山宝樹)。左の床の間には朝顔の風鈴が飾られていました。
床の間の横から外に出られそうです。手前にあるスリッパを履いて行ってみます。
なんと!かわいらしい野菜の風鈴がありました。きゅうり、なす、赤パプリカ、黄パプリカ・・・。奥には花手水が。こちらもかわいい♪
花手水のとなりの門から出て右側へ。本堂のちょうど裏側に出るようです。
こちらは「船型の庭」。苔と石で造られていて、左側が船の先端です。この地が古来は海だったことから船の形に見立てられているそう。船は御本尊の観音様が降り立つとされる南方の「補陀落山」へ出帆する様を表しています。
本堂裏側の戸にリスが17匹描かれているのが「葡萄栗鼠図」です。これは「板戸問答」。17匹のリスを3人でわけてみましょう、という問答です。続いて内訳が書かれているのですが、この問答、私はちんぷんかんぷんでした。難しい・・・。皆さんも訪問したときは是非チャレンジしてみてください。
そんな私がこの問答から逃げるようにして目を移したのは、この廊下に飾られている風鈴です。さっきのガラスの風鈴とはまた違って、こんな風鈴も素敵ですね。小さい頃、家のベランダに吊られていた釣鐘の風鈴を思い出しました。
そして奥まで進むと、本堂の入口に戻ってきました。スリッパを借りた部屋まで行って、スリッパを返して終わりです。
御朱印*繁忙期は書置きのみの場合も
本堂に向かって右手の方で御朱印受付をしていました。今回私たちが授与いただいたのはこのお盆限定の2つ。行く前に授与していただこうと決めていた御朱印があったのですが、訪問時は選べませんでした。また、「8/1~8/16までは書置きのみ」とのこと。
素敵な御朱印ばかりで迷っちゃいますね。
他に、お守りやポストカード、御朱印帳なども用意されていました。
正寿院では、御朱印、お守りなどを公式サイトから申し込めるようです。気になった方は公式サイトの「授与品」のページをチェックしてみてくださいね。
【客殿】SNSで人気の猪目窓・天井画がある「則天の間」
「則天の間」は拝観受付・本堂参拝後に
駐車場から来ると、本堂より先にこちらの客殿を通りますが、中に入れるのは拝観受付をしてから。もちろん本堂へ参拝してからというのが望ましいでしょう。
拝観受付でもらったパンフレットを客殿の入口で提示し、日付スタンプを押してもらってから中に入ります。
こちらの「則天の間」は飲食禁止・三脚禁止ですが、写真はOKです。
「則天」とは「則天去私」という言葉の一部です。「則天去私」とは「自分の考えや欲にとらわれず、身を天地自然にゆだねる」という意味。休憩所という意味合いで用意されたこの「則天の間」で、自然に身を任せてゆっくりと、心穏やかな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
【猪目窓】ハート型の「幸せを呼ぶ窓」の向こう側に四季を感じる
猪目の形にくりぬかれた窓・猪目窓。
この客殿には神仏が祀られていないのですが、それは「ここにゴロンと寝転んで、見えるものや聞こえるもの、においなど自然の素晴らしい雰囲気を感じてほしい」という副住職の思いからだそうです。神仏が祀られていないために何か災いがあってはならないということで、魔除けの意味で作られたのがこの猪目窓なのです。・・・とは言ってもハートに似ているので、「かわいい」としか思えません(笑)。
猪目は災いを除いて福を招く意味があるので、「幸せを呼ぶ窓」としても人気を集めています。
この猪目窓の魅力は「窓の向こうの四季を楽しめること」。桜・新緑・紅葉・雪景色など、季節によって変わる窓の向こう側の景色を楽しむことが出来るのです。
また、夕方になると、夕陽が差し込むことによって畳にハートが映し出されます。これは「幸せのおかげ」と呼ばれているそうです。
【天井画】曼荼羅の教えを説く160枚の日本画
猪目窓と同じ部屋を見上げると、そこに広がるのが「天井画」。「花」と「日本を感じる風景」をテーマとした色とりどりの160枚の日本画が天井を埋めつくしています。
本堂内陣の天井画を後世に残したいという思いから、客殿に天井画を復興するという形で始まったそうです。
完成までに6年の歳月がかかりました
本堂内陣の天井画同様、こちらの天井画でも曼荼羅の教えを説くということから、出来るだけたくさんの方にということで、20~70代の日本画家 約90名の協力を得て完成しました。
1枚1枚が素晴らしく、そしてそれが160枚集まって1つの画としても成り立つ。1つ1つは異なる存在であっても、お互いを尊重して支えあうことによっていのちを生かし合うという曼荼羅の教えが、この160枚の天井画で表現されています。
四隅には守護神として、青龍・白虎・朱雀・玄武の四神が配されています。
また、春夏秋冬の舞妓画が4枚あるので、探してみてください。
則天の間では、仰向けに寝転んで天井画などを楽しむことができます。うつ伏せは×。
【虹色風鈴】七色に光る不思議な風鈴
則天の間の横には縁側があり、庭を眺めることが出来ます。
そこにあるのが「虹色風鈴」。不思議と七色に光って見えるガラスで作られているので、シャボン玉のように見えますね。
これで正寿院の参拝は終了です。
正寿院へのアクセス
詳しくは正寿院公式サイト<交通アクセス>でご確認ください。
公共交通機関を使う
◆宇治茶バス(2023年3月4日~2023年12月10日)※土・休日のみ運行
【バス】京阪宇治駅~JR宇治駅~奥山田正寿院口 → 【徒歩】15分
京都京阪バス
◆京阪宇治駅・JR宇治駅・近鉄新田辺駅→維中前バス停下車→タクシーで10分
車を使う
皆さんの旅が最高の旅になりますように
今回は、京都・正寿院をご紹介しました。
皆さんの旅が最高の旅になりますように。
いい旅を。たまのじでした。
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